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燃えよ剣(上巻)改版
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燃えよ剣(下巻)改版
燃えよ剣(下巻)改版


山南敬助の新撰組脱走



まぐまぐより

○小学校時代の話。 国語
の時間、「あくまでも」という
言葉を使って文を作 れ、とい
う課題が出た。

「あくまでも○○とは限らない」
とか「あくまでも ○○にこだわ
る」とかの例文が発表された
中、ちょっとお勉強の苦手なA
君 が珍しく颯爽と手を挙げ、自
信たっぷりに言ってのけた。

「あくまでも、良い あくまと悪い
あくまがいます!!」

NHKの大河ドラマ「新撰組!」にはまっている。当代のイケメンをそ
ろえ、三谷幸喜脚本のスピーディで息詰まる展開から目が離せな
い。

ただ、何とも解せなかったのが山南敬助の脱走と切腹。

山南敬助は北辰一刀流の免許皆伝、のち近藤勇の天然理心流
の門下に入る。浪士組に入って上京し、組内の覇権争いに参加、
殿内義雄・芹沢鴨の暗殺に荷担する。その実力を認められ、新撰
組副長・総長を歴任する。

文武両道で温厚な人柄。その裏にある苛烈な性格。山南は熱烈
な尊皇攘夷の理想家であったらしい。

元治元(1864)年1月、近藤と二人で京都を歩いていたところ、たま
たま旅館・岩木升屋に浪士たちが乱入したのを討ち取り、褒章金
8両を賜った。激しい戦闘だったと伝えられ、山南は重傷を負った
とも考えられている。

その後山南の記録はしばらく途絶え、かの有名な池田屋事件にも
参加していない。

山南の運命が急展開するのは、西本願寺への新撰組屯所移転に
際して異を唱えたころからである。長州藩を援護する西本願寺に武
力をもってにらみを利かせようとする新撰組のあり方に対して山南
は強硬に異を唱え、慶応元(1865)年2月23日、山南は突如、切腹
して果てる。

この切腹の原因として語られるのが山南の新撰組脱走である。大
津宿で沖田総司に捕らえられた山南は、「局を脱するを許さず」とい
う局中法度に背いたとして切腹を命じられる。切腹の間際になじみ
の芸妓である明里と屯所の出窓越しに今生の別れをしたというドラ
マも伝わる。

この屯所移転反対→脱走→切腹というシナリオは不自然の感が否
めない。総長という高い地位にあった山南が、どうして屯所の移転く
らいで脱走という幼児じみた手段に訴えて切腹までしなければなら
なかったのか?

ふつうに考えられるのは、新撰組副長土方歳三との確執である。
新撰組内部の覇権争いが屯所移転という問題で表面化し、それ
に破れた山南は追い詰められて脱走・切腹したというもの。しかし
、山南と土方は旧知の仲であり、多少の確執で死ぬか生きるか
の争いになるとは考えにくい。

この点、NHKのドラマでは、山南の厭世的な性格が強調されてい
るようだ。山南は時代に取り残されていく自分に疑問を持ち、わが
身の振り方を考え直したいと思って江戸に帰ることを思い立つ。
「富士山が見たい」という明里を連れて…。

僕は、どうしてもこの展開が解せないのである。明治維新まであと
数年という激動の時代に、富士山が見たくなって新撰組を脱走す
る山南が滑稽でありえないと思うのである。それがまた山南が愛
されるゆえんかもしれないが。

ドラマでは、堺雅人演じる山南は温厚で非の打ち所のない人物と
描かれている。おそらく、世間一般のイメージもそうなのだろうと思
う。しかし、そこに僕は異議を唱えたいのである。

僕は、脱走のころの山南はマトモな精神状態ではないはずだと思
う。岩木升屋事件のあたりから、山南は変わっていったのではない
かと僕は推測する。重傷を負ったこともあって病にふしがちになっ
た彼は、総長という地位は与えられたもののただのお飾りとして扱
われ、そのことで山南はずたずたになっていったのではなかろうか。

山南はひねくれ、孤立し、傷つき、そして追い詰められていった。屯
所移転に反対して目立とうとしたけれど、実権を握る近藤と土方か
らは相手にもされなかった。自分の存在価値を見出せない山南は
ますますふさぎこむようになり、生きていてもしかたがないと思い詰
めて自害した…。

山南の脱走は後世の作り話であるという説が強い。僕もこれはい
んちきではないかと思う。力をもたない山南が脱走したからといっ
て、これを追いかける必要もなければ、法度に背いたとして切腹を
命じる理由もないのである。脱走の件については、山南は華のあ
る人物なので、終わり方も華を与えたいと後世の人たちが考えた
のだろうと考える。

もし山南の脱走話が事実であったとすれば、山南は僕が考えてい
るよりももっとマトモでない人物ということになる。つまり、新撰組で
のけ者扱いの彼は、ふざけるなよ、もうこんな隊にいてやるものか
と脱走したことになり、ますますひんしゅくな人物に映るのである。


春風に吹きさそはれて山桜 散りとて人におしまるヽかな
                             -伊東甲子太郎




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